この記事のポイント
  • 動く順番は「安全 → 相談 → 記録 → 法的手続き」。法的手続きは安全確保の後でよい
  • 今まさに危険が迫っているなら、迷わず110番。警察は家庭内の暴力にも対応する
  • 当事者別の24時間窓口がある(DV相談+:0120-279-889、児童相談所:189 など)
  • 避難の準備は静かに進める。「家を出る」と加害者に予告しない

家族から殴られた、怒鳴られた、物を投げつけられた。あるいは「またあの空気になりそうだ」と感じて、息をひそめている。そんな状態で「離婚は」「慰謝料は」と考えるのは、正直なところとても難しいことです。

このページでは、法的手続きの話に入る前に、まず「今夜・今週をどう安全に過ごすか」に絞ってお伝えします。最後まで読めなくても、見出しを拾い読みするだけでも構いません。

結論——順番は「安全 → 相談 → 記録 → 法的手続き」

家庭内の暴力に直面したとき、原則として次の順番で動くことをおすすめします。

  • ① 身の安全を確保する(緊急時は迷わず110番)
  • ② 専門の相談窓口に連絡する(当事者によって窓口が違います)
  • ③ 起きたことを記録に残す(後の証拠になります)
  • ④ 必要に応じて法的手続きを検討する(保護命令・離婚・刑事告訴など)

「いきなり弁護士に相談しなきゃ」と思う必要はありません。法的手続きは、安全が確保されてからでも遅くないのが基本です。順番を間違えると、かえって危険が高まることもあります。

まず確認——今、どれくらい危険な状況ですか

レベル1:今まさに危険が迫っている

殴られている最中、刃物が出ている、家から出してもらえない、子どもにも手が及んでいる——このような状況なら、迷わず110番(警察)です。けがをしているなら119番(救急)も併せて。

「家庭内のことで警察を呼んでいいのか」と迷う方は多いですが、警察は家庭内の暴力にも対応します。DV防止法でも、警察官による制止・保護が定められています。

レベル2:今夜はひとまず収まったが、また起きそう

このタイプが一番多いかもしれません。この場合は、今夜のうちに専門相談窓口の番号を控えておくことから始めてください。

レベル3:身体的な暴力はないが、怒鳴る・無視する・お金を渡さない等が続く

身体への暴力がなくても、これらは「精神的暴力」「経済的暴力」と整理される行為で、ケースによっては深刻な事態となる可能性もあります。相談の対象になります。

当事者別——今夜から使える相談窓口

  • 配偶者・パートナーからの暴力:DV相談+(プラス)0120-279-889(24時間・無料、電話・メール・チャット)/DV相談ナビ #8008
  • 子どもへの暴力・子どもが暴力にさらされている:児童相談所虐待対応ダイヤル 189(いちはやく・無料)
  • 高齢の家族のこと:お住まいの市区町村の地域包括支援センター
  • どこに連絡していいか分からない:よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)
  • 命の危険があるとき:110

事実婚や生活の本拠を共にする交際相手からの暴力も、原則として保護の対象になりえます。また、子どもの前で配偶者から暴力を受けること(面前DV)は、子どもに対する心理的虐待にあたりえます。お子さんを守る視点からも、相談する正当な理由になります。

「家を出る」という選択肢——シェルターと持ち出すもの

身の危険を感じたら、一時的に家を離れる方法があります。配偶者暴力相談支援センターや警察に相談すると、一時保護(シェルター)につないでもらえる場合があります。

可能であれば持ち出したいもの:本人確認書類(健康保険証・マイナンバーカード等)、現金・キャッシュカード・通帳・印鑑、スマートフォンと充電器、常備薬・お薬手帳、母子手帳(子連れの場合)、当面の着替え。

ただし、完璧を目指さないでください。命の危険を感じたら、何も持たずに飛び出して構いません。書類は後から再発行できますが、命はそうはいきません。

やってはいけないこと

  • 「家を出る」「警察に行く」と加害者に予告しない——直前の予告は暴力がエスカレートする危険があります。準備は静かに進めるのが原則です
  • SNS・位置情報に注意——避難後の投稿や共有アカウント、位置情報共有から居場所が知られるケースがあります。共有していたパスワード類は安全な場所に移ってから見直しを
  • 「自分が悪い」と思い込まない——どんな理由があっても、暴力で問題を解決していい関係はありません

子連れで避難する場合は、学校・保育園に事情を伝え、加害者が引き取りに現れた際の対応を事前に共有しておくことをおすすめします。弁護士や配偶者暴力相談支援センターから学校宛に連絡する方法もあります。

法的手続きはいつ考えればいいか

安全な場所を確保できたら、次のような法的手段を順次検討します。

  • 保護命令——裁判所が加害者に接近禁止・退去等を命じる制度(DV防止法)
  • 離婚調停・訴訟慰謝料請求刑事告訴(暴行罪・傷害罪等)
  • 親権・養育費・親子交流の取り決め

最適な順番・組み合わせは、お子さんの有無、経済状況、加害者の対応などで大きく変わります。費用面が心配な場合は、法テラス(0570-078374)の立替制度を利用できる場合があります。別居後の生活費については婚姻費用の解説記事もご覧ください。

今夜、できることを一つだけ

情報量が多くて頭に入らなかったかもしれません。今夜できることを一つだけ挙げるなら——スマートフォンに、相談窓口の番号を一つだけ登録しておく。電話をかけるかどうかは、後で決めて構いません。「いつでもかけられる」と知っているだけで、心の余裕が変わります。

どんな状況でも、選択肢は必ずあります。一人で抱え込まず、専門の窓口を頼ってください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。記載した制度・電話番号は執筆時点のものです。

安全が確保できたら、今後のことを一緒に考えます

保護命令・離婚・慰謝料請求など、状況に応じた進め方をアドバイスします。面談はZoomまたはお電話。ご自宅以外の安全な場所からもご相談いただけます。