- 退職届・退職合意書には、その場でサインしない。合意退職になると解雇を争えなくなる
- 「解雇なのか、退職勧奨なのか」を会社に明確にさせる。退職勧奨は断れる
- 解雇されたら、解雇理由証明書(労働基準法22条)を必ず請求する
- 解雇は、合理的な理由を欠く場合は無効(労働契約法16条)。争う選択肢がある
「明日から来なくていい」「今月末で辞めてもらう」——突然の解雇通告は、頭が真っ白になるものです。しかし、通告直後の対応を間違えると、本来争えたはずの解雇を争えなくなってしまいます。
この記事では、解雇を告げられた直後にやるべき3つの行動と、やってはいけないことを、労働者側の視点で整理します。
最初に:その場で書類にサインしない
解雇の場面で最も多い失敗が、会社に促されるまま退職届や退職合意書にサインしてしまうことです。
これらの書類にサインすると、法的には「解雇された」のではなく「自分の意思で辞めた(合意退職)」ことになります。合意退職になると、後から「あれは不当解雇だった」と主張することは難しいのが一般的です。
会社に「サインしないと手続きが進まない」「今日中に決めてほしい」と言われても、応じる義務はありません。「持ち帰って検討します」の一言で十分です。
行動①:「解雇」なのか「退職勧奨」なのかを確認する
会社の「辞めてもらう」という言葉には、法的に全く異なる2つの可能性があります。
- 解雇——会社からの一方的な労働契約の解約。会社は30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要(労働基準法20条)
- 退職勧奨——「辞めてほしい」というお願い。応じる義務はなく、断ることができる
あいまいなまま話が進むと、後から「解雇ではなく本人が退職に応じた」と主張されることがあります。「これは解雇ですか? 解雇であれば書面でください」と確認することが、初動の最重要ポイントです。退職勧奨であれば、その場で結論を出さず、条件(退職金の上乗せ等)を含めて冷静に検討しましょう。
行動②:解雇理由証明書を請求する
解雇だと確認できたら、解雇理由証明書を請求してください。労働者が請求した場合、会社は解雇の理由を記載した証明書を交付する義務があります(労働基準法22条)。
この書面は、解雇の有効性を争う際の出発点です。会社が後から解雇理由を追加・変更することを防ぐ意味もあります。請求はメールなど記録が残る方法で行いましょう。
行動③:証拠を確保する
次の資料を手元に確保しておくと、その後の交渉・手続きが格段に進めやすくなります。
- 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則
- 解雇通知書・解雇理由証明書
- 給与明細(直近数か月分)
- 解雇に至る経緯のメール・チャット・面談記録
- 人事評価資料(成績不良を理由とされた場合)
その解雇、本当に有効か——解雇権濫用法理
労働契約法16条は、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。
日本の裁判実務では、解雇のハードルは会社側にとってかなり高く設定されています。例えば次のようなケースでは、解雇が無効と判断される可能性があります。
- 成績不良を理由とするが、具体的な指導や改善の機会を与えていない
- 協調性不足など抽象的な理由のみで、具体的な問題行動の裏付けがない
- 経営難を理由とする整理解雇だが、人員削減の必要性や人選の合理性に疑問がある
- 1回のミスなど、処分として重すぎる
争う場合の選択肢と生活のこと
解雇を争う場合、会社との交渉、労働審判、訴訟という選択肢があります。求めるものは大きく2つで、職場への復帰(地位確認)か、金銭的な解決(解決金の獲得)です。実際には、解雇無効を主張して交渉し、相当額の解決金で合意退職する形が多いです。
生活費の心配については、解雇を争いながら失業保険を「仮給付」で受給できる制度があります。仮給付は解雇を争うことと矛盾しないので、ハローワークにご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q. 解雇予告手当をもらってしまったら、もう争えませんか?
受け取っても解雇の有効性を争うことは可能です。ただし、受け取り時の書類の内容によっては影響することもあるため、サインする書面には注意してください。また、解雇予告手当を請求することは、解雇を前提とする言動と解釈される可能性があるため、解雇無効を主張する可能性がある場合には、慎重に検討しましょう。
Q. 試用期間中の解雇でも争えますか?
試用期間中でも解雇が自由にできるわけではなく、通常の解雇よりは緩やかとはいえ、合理的な理由が必要です。争える場合があります。
Q. 相談のタイミングはいつがよいですか?
早いほど選択肢が多く残ります。理想は「サインを求められた段階」、遅くとも解雇後できるだけ早くのご相談をおすすめします。当事務所は不当解雇のご相談は初回無料(平日昼間)です。
不当解雇のサービス詳細ページでは、費用や解決までの流れをご案内しています。未払い残業代がある方は残業代請求の時効の記事もご覧ください。