この記事のポイント
  • 光が丘は「農地→陸軍飛行場→米軍グラントハイツ→団地と公園」という歴史を持つ
  • 土地の法的な性格は、戦争・占領・都市計画という大きな力で塗り替えられてきた
  • 土地をめぐる問題では、いまも個人の暮らしと制度の論理が交差する

団地と公園の街の足元の話

練馬区の光が丘といえば、大きな団地と広々とした光が丘公園。休日には家族連れがシートを広げ、ジョギングする人が行き交うのどかな住宅地です。私はこの街で育ちました。

この土地は、かつて戦闘機の飛行場であり、その後30年近く、日本人が自由に立ち入れない「アメリカの街」でした。

今日は、光が丘という土地の来歴とそこから考えたことを書いてみます。

結論:いま普通に暮らしている土地にも、法と政治の歴史が折り重なっています

光が丘の土地は、おおまかに言って三度、性格を変えています。

戦時中:陸軍の飛行場(成増飛行場)。太平洋戦争中、このあたりの畑や集落は接収され、首都防空のための飛行場が造られました。もともと暮らしていた農家の方々は、立ち退きを余儀なくされたとされています。

戦後:米軍の家族住宅「グラントハイツ」。敗戦後、飛行場の跡地は連合国軍に接収され、米軍将校とその家族のための住宅地になりました。芝生の庭つき住宅が並び、学校や教会まで備えたフェンスの内側の「小さなアメリカ」です。名前の由来は、南北戦争の将軍で後に大統領となったグラントだといわれています。尾崎豊さんに「米軍キャンプ」という歌がありますが、グラントハイツのことだとする説があるようです。

返還後:光が丘団地と光が丘公園。1970年代に全面返還され、その後の再開発で、大規模な団地と都立公園を中心とする現在の光が丘が生まれました。

つまり光が丘は、「農地 → 軍用地 → 占領地 → 団地」と、土地の法的な性格そのものが何度も塗り替えられてきた場所なのです。

「土地は誰のものか」という問い

法律家の目でこの歴史を見ると、いくつもの論点が折り重なっていることに気づきます。

戦時の接収。戦争のためだからと、住み慣れた土地を手放さざるを得なかった人たちがいました。国家の必要と個人の財産権が正面からぶつかる場面です。

占領下の土地。敗戦後、日本の主権が制限されていた時代には、国内の土地でありながら日本の法秩序が及びきらない空間が多く存在しました。フェンス一枚の内と外で、適用されるルールが違う。法律家として考えさせられるのは、こうした「例外」的な空間が、非常時の名の下に生まれ、そして案外長く続くということです。

返還と再開発。土地が戻ってきたあと、それをどう使うかは、都市計画という法制度の中で決められていきます。光が丘の場合、住宅と大きな公園という形に落ち着きましたが、それも当時の住宅難や政策判断の産物です。別の判断がされていれば、まったく違う街になっていたはずです。

公園の芝生の下にあるもの

光が丘公園の広い芝生は、もとをたどれば飛行場やグラントハイツの敷地です。私が子どもの頃に駆け回っていた場所は、かつて誰かが泣く泣く手放した畑であり、アメリカの軍人の家族が暮らした土地でした。

こう書くと重たい話のようですが、私はこれを「暗い歴史」としてだけ受け取ってはいません。むしろ、土地というものは、そこに生きた人たちの事情と、その時々の法と政治の判断が何層にも積み重なってできている。そのことを、光が丘は身をもって教えてくれると感じています。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も、ヒルバレーという架空の街の歴史を描いた作品として見ることができます。時代ごとに街並みや人々の暮らしが変化していく点は、私がこの映画を個人的に好きな理由の一つです。

現代の私たちにつながる話でもあります

「土地の性格が変わる」ことは、過去の話ではありません。相続で農地を引き継ぐ、道路用地に土地を提供する、再開発で建物が建て替わる。規模は違っても、土地と法の関係が動く場面は、いまも私たちの身近で日常的に起きています。

そして、そうした場面ではしばしば、個人の思い入れと制度の論理がぶつかります。光が丘の歴史が教えてくれるのは、その緊張関係は昔から続いているということと、だからこそ、土地の問題では「その土地の来歴」を丁寧に見る必要があるということです。

まとめ

  • 光が丘は「農地 → 陸軍飛行場 → 米軍グラントハイツ → 団地と公園」という特異な歴史を持つ土地です
  • 土地の法的な性格は、戦争・占領・都市計画といった大きな力で塗り替えられてきました
  • 土地をめぐる問題では、いまも昔も、個人の暮らしと制度の論理が交差します

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